武蔵美人むさびと

企業で活躍する若手 OB・OG 紹介 “むさびと”

富士ゼロックス株式会社池田絵里子
富士ゼロックス株式会社池田絵里子
富士ゼロックス株式会社池田絵里子

取材:2014年7月

池田 絵里子(いけだ・えりこ) 2009年、大学院造形研究科修士課程デザイン専攻 デザイン情報学コース修了。
“人が仕事をする環境”にアプローチする会社は、やりがいがありそうと考えて同社を志望。ソフトウェアやモバイルアプリなどのユーザーインターフェイスデザインを通じまさに“働く人”に役立つデザインを日々追求している。

使いやすさと親しみやすいデザイン
その背後には、より大きなテーマが

 複合機プリンターの世界的メーカーとして名高い富士ゼロックスには、もうひとつのビジネスの柱がある。それが『DocuWorks(ドキュワークス)』をはじめとする総合文書管理ソフトウェアや、コミュニケーションを支援するソリューション、サービスの提供だ。
 「『DocuWorks』は、Word、Excelなど異なるアプリケーションで作られた電子文書や、電子化した紙文書を一元管理できるソフトです。フォーマットの異なるファイルでも、まるで机の上に並べた紙の文書を扱うような感覚で、自由に束ねたりバラしたりできるのが特徴なのですが、このソフトにオプションとして加わった機能『ドキュメントトレイ オプション』、そして最新バージョンの『DocuWorks8』が、私の目下の代表作になります」とモニタを差した池田さんの指先に、カラフルなトレイ型のアイコンがいくつも並ぶ。
 空のもの、文書が数枚入っているもの、こぼれ落ちそうに山積みになったもの。トレイ内の状態が一目で分かるようにとデザインされたアイコンは、単に届いた文書のボリュームだけを示している訳ではないと池田さんは言う。
 「このトレイは文書をやりとりするグループ間で共有されています。だから文書がスムーズに流れているか、どこで留まっているかがはっきり見える。文書処理がなかなか進まないというのは要するに業務が滞っているという意味ですから、その状況を改善するヒントになるんですね」。
 一見、スムーズな文書のやりとりを目的として開発された機能のように思えるが、その裏側には“業務環境の改善・コミュニケーションの向上”という、より根源的なテーマが内包されているのだ。

『DocuWorks 7.2』からオプションとして加わった新機能『ドキュメントトレイ オプション』のアイコンバリエーション。アイコンを見れば直感的に、トレイの中の状況・業務の進捗が分かるデザイン表現にこだわった。

DocuWorks8企画時のコンセプトスケッチ。
開発とデザインが共同で出したアイデアを、池田さんが視覚化して検討を進めた。

大学で育まれた論理的思考の芽
新たなステージでの開花に期待

 「当社の製品やサービスは、すべてが“Human Centered Design~人間中心設計”であれ、という哲学に貫かれています。美しいだけ、斬新なだけではいけない。それを使う人や現場を観察し、問題を発見して働き方の改善に役立つものを創造しようという姿勢は、武蔵美時代にとことん要求された“論理的裏付けのあるデザイン”と相通じるものがあると感じました」と語るとおり、池田さんは同社にさらりと馴染み、独自の存在感を示し始めた。
 温和で控えめ、決してぐいぐいと前に出ていくタイプではないが、そのアイデアや意見にこめられた鋭さに一目を置く仲間たちに囲まれて、彼女の表情はとてもリラックスして見える。
 「今進めているのは、横浜赤レンガ倉庫の夏休みイベント。来場者が施設のあちこちで撮影した画像を、タイムスタンプつきでプリントアウトして持ち帰ってもらおうという提案が採用されたんです」。
 横浜市芸術文化振興財団との共同実証実験であるこの企画もまた、現地を視察して、どうすれば集客と来場者の思い出づくりに貢献できるかと考えた結果、すぐにGoサインが出たのだという。
 効率重視のオフィスも現場、ライブ感溢れる観光スポットも現場。そこからどんな課題やヒントを発掘できるだろう…? 池田さんの澄んだ瞳は、常にその“本質”を見つめ続けている。

横浜赤レンガ倉庫の「思い出プリント」。
池田さんが提案したアイデアがほぼそのまま導入された。

上司人事が語る武蔵美力

木暮毅夫
内に秘めたる確かな強さ
木暮 毅夫

ヒューマンインターフェイスデザイン開発部
部長

 現場でワイワイガヤガヤ議論している中で、彼女はいつも自然体で控えめ。なのにその一言には非常に説得力があって、周りの人間も「池田さんが言うなら」という納得感がある。自らのアイデアをまとめる時も、多くの意見に耳を傾けた上で、受け入れる部分、切り捨てる部分をしっかりと選択できる。
 受容力と同時に、流されない芯の強さを持った逸材です。

吉村宏樹
光っていた問題発見解決能力
吉村 宏樹

採用育成センター

 当社は毎年『デザイン研究会』という合宿形式のインターンシップを行います。池田さんも参加者の一人。参加者は、研修期間中に自らの課題を見つけ、限られた時間で改善策となる企画やモノを創りだすことが求められますが、これはやはり難題。いわば“問題発見解決能力”を問うこの合宿中に、PDCAを繰り返して自らのアイデアを磨いていった池田さんの挑戦心は、トレーナーとなった先輩社員達からも高く評価されました。