取材:2012年6月(2017年3月改訂)
藁谷 優子(わらや・ゆうこ) 2006年、油絵学科油絵専攻卒業。
素直な感性に基づいた、ほのぼのとしたキャラクターづくりが高い評価を得ている。2009年『Berry Puppy』キャラクターデザイン。『リラックマ』デザインチームを経て、現在は『すみっコぐらし』デザインチームに所属。
かつては女子中高生が持つもの…というイメージだったキャラクターグッズ。しかし最近では、その購買層は随分と拡大しているようだ。OLや、お子さんと一緒に楽しむママ。さらには男性やシニアでも、気軽に手を伸ばすようになったキャラクターグッズの世界。ファン層は国内だけでなく、世界にも広がっている。
その理由を藁谷さんはこう分析する。
「以前はもっと単純に、可愛さがキャラクターの命でした。でも最近は、そのキャラクターがどんな性格なのか、どんな生活をしているのか…といった物語が求められている気がします。たとえば『リラックマ』は、いつもたら~っと頑張らない性格。このゆるさが、忙しい時代の中で癒されたいと感じている人の心を、ふっと掴むのかも」
そして藁谷さん自身も、サンエックスの“物語のあるキャラづくり”に惹かれて、入社したひとりだ。
“ゆるさ”だったり、“シニカルさ”だったり、“せつなさ”だったり。従来のキャラクターとは一味違う個性をもったサンエックスのキャラを、藁谷さんは心から愛している。
「私は今、すみっコぐらしチームのメンバーとして商品デザインに携わっていますが、以前発売されたリラックマのバスタイムがテーマのシリーズで、デザインを考える際は、どんなシチュエーションやアイテムならリラックマらしいかな、ファンの方が納得してくれるかな、と考えましたね」
キャラのもつ世界観を大切にしながら、世に送り出されてきたサンエックスの製品。『リラックマ』は、来年デビュー15周年、総アイテム数10,000を超えるという、キュートなモンスターブランドに成長した。
一方で、たとえ大ヒットがあったとしても、新たなキャラクター開発の努力を怠らないのがメーカーの務めだ。サンエックスでは、全デザイナーによる社内コンペが2ヶ月に1回行われ、支持を集めたキャラクターが商品化されている。
「既存キャラのデザインを担当しながら、常に自分のものづくりも考えていかなくてはいけませんから、結構ハードですね。審査する仲間もプロですから、ビジュアルのクオリティも、オリジナリティも厳しくジャッジされます」と語る藁谷さんだが、入社3年目にしてこのコンペを勝ち抜いて、商品化されたキャラクターがある。
イチゴが大好きな子犬が主人公の『Berry Puppy』シリーズは、素直な愛らしさや甘い色使い、デザインの完成度が、高く評価された。
「残念ながら市場には定着しませんでしたが、とてもいい経験をさせてもらえました。自分の生み出したものが形になり、誰かの手元に届く喜びを味わいましたし、長く愛されるキャラと、そうでないキャラの違いはどこなんだろうと、さらに深く考えるようになりました」と藁谷さん。
完成された世界観を守ること。そして新たな世界を創造すること。愛らしさだけでは支持を得られないキャラクタービジネスの世界を歩む足どりは、軽やかで着実だ。
センスと経験をいかしディレクターへの道を
曽根 謙二
制作本部 デザイン室常務取締役
自分のデザインしたキャラクターそのもののように、ふんわりとやわらかな印象の彼女ですが、なかなか芯が強いのです。キャラへの愛情と細部のこだわり。あたたかみのある素直な感性は、社内でも高く評価されています。彼女の描く、ひとめで欲しくなる可愛らしさはキャラグッズの王道。さらに経験を積み、プロジェクトをまとめるディレクターの役割を担ってくれることを期待しています。