武蔵美人むさびと

企業で活躍する若手 OB・OG 紹介 “むさびと”

田島ルーフィング株式会社吉田拓哉
田島ルーフィング株式会社吉田拓哉
田島ルーフィング株式会社吉田拓哉

取材:2018年6月

吉田 拓哉(よしだ・たくや) 2017年、油絵学科卒業。
武蔵美時代に培った接客業のアルバイト経験からデザインやアートに関わりつつ、人とコミュニケーションできる仕事を志す。床材をはじめとする建築資材メーカーとして豊富な実績を持つ田島ルーフィングに入社後はビジュアルインパクトのある提案ができる営業として社内外で存在感を増している。

油絵学科から営業マンへ
自称へそまがりの軽やかな挑戦

 細身の身体にぴしりと着こなしたスーツ。人懐こい笑顔の吉田さんは「もともとちょっとへそまがりで、人と違う道を行きたいタイプなんです」と自己分析する。
 その言葉が嘘ではないことは、彼のこれまでの経歴を見れば分かる。進学校の普通科から一念発起し、武蔵美でも屈指の狭き門である油絵学科に合格。アーティストを志す同級生もいる中で、堅実に就職する。しかも営業職に。確かに、意外性あふれる人物なのだ。
 入社した田島ルーフィング株式会社は、優れた技術を基盤とした屋根材・床材で知られる老舗建材メーカーだ。意匠性の高い製品も数多く手がけている同社には、当然デザイン部門もある。
 それにもかかわらず、吉田さんがあえて営業職を選んだ理由は、武蔵美時代に飲食店のバイトで接客の楽しさを知っていたからだという。
 「ひとりコツコツと制作に打ち込む経験は、大学でたっぷりしてきましたから。社会人として新たなフェーズに進むのなら、もっとたくさんの人とコミュニケーションできる仕事に挑戦してみたいなと」。人生の大きな節目である進学・就職というハードルを、既成概念にとらわれることなく飛び越えてきた柔軟さが伺えるエピソードだ。

“経年を楽しむデニム地の床材”などコンセプチュアルな製品づくりで話題の田島ルーフィング。
官公庁から注目の商業スポットまで、多くの納入実績がある。

自分の力を最大限に活かせる
“使いどころ”を選ぶクレバーさ

 そんな吉田さんが入社して気づいた自分の強み。それは“デザインに関する幅広い知識と、ほどほどのスキル”だという。
 「入ってすぐは、先輩の営業に帯同させてもらいながら、製品知識や顧客サービスの研修を受けていました。でも時間的に結構ゆとりがあったので、勉強がてら部署の人がクライアントに持っていく提案資料づくりの手伝いをしてみたんです。そうしたら“なんだこれ。かっこいいな!”と感心してもらえて」。
 なんの予備知識もない吉田さんのつくった提案書は、大学時代のポートフォリオのように視覚的に伝えることを意識したもので、いわゆる営業マンが用意する定番の“提案書類”とは、ずいぶん趣が違った。
 しかし、メーカー営業は製品を売るのが仕事、そして同社の商品は、内装・外装・空間デザインといった美観とも深く関わっている。言葉やスペックではなく、人の目や感性に訴えかけるツボを心得た吉田さんの“魅せ方”は、営業部にとって有効な武器と認められたのだ。
 「そうはいっても、僕の画力やセンスは、武蔵美の仲間たちに比べたら、決して高くありません。でも同じ能力値であっても、使いどころを選べばより大きな効果を得られる」と吉田さん。自分を客観視できるクレバーさは、着実に実績を重ねている2年目でも変わらない。
 仲間に託された注力案件のプレゼン資料を、よりスタイリッシュに、伝わる形へとブラッシュアップする。最近まかされることが増えた製品PRのイベントでは、よりインパクトのある魅力的なディスプレイを、と知恵を絞る。
 「武蔵美での学びが、仕事でこんなに有効だとは思っていなかったんですけどね」と楽しげに笑う瞳には、きっともう次に飛び込むべきフェーズが映っているのだろう。

客先に出向いての説明会や各種展示会などにも、吉田さんの「魅せるセンス」が活かされている。

「クライアントに手渡せる資料でインパクトを残したいと思うのは、話す力がまだまだだから」と、はにかむ吉田さん。美大生としての経験や感性をバックボーンに、製品のあじわいや魅力を伝えられる営業をめざす。

上司が語る武蔵美力

中川真一
高いセンスと瞬発力でチームに貢献
中川 真一

床材営業部 東京支店
支店長

 営業はとにかくスピードを求められる仕事。今日来たオーダーに明日応えなくては、というような案件も多々あります。そんなとき吉田さんが見せる、限られた時間でハイレベルなものを仕上げる瞬発力にはいつも驚かされますが、これもきっと大学時代にたくさんの作品を完成させてきた自信があるからなのでしょう。一味違うプレゼン力は、部署の業績にも大いに貢献しています。