武蔵美人むさびと

企業で活躍する若手 OB・OG 紹介 “むさびと”

株式会社岡村製作所武田京子
株式会社岡村製作所武田京子
株式会社岡村製作所武田京子

取材:2013年7月

武田 京子(たけだ・きょうこ) 2008年、建築学科卒業。
入社以来、流通・物販などの店舗デザイン等を担当し、今春から現在の「コンペ担当チーム」へ。
クライアントの要望に、的確かつ迅速にレスポンスできると、社内外からの評価も高い。

物事すべてにある“論理”を
伝える力が求められた武蔵美時代

 “物事はすべて、ロジックをもって語るべきもの。誰もが納得できるかたちで発信できなくては意味がない” …それは武田さんにとって、武蔵美時代の恩師がくれた忘れられない言葉だ。
 大学の課題で日々設計やモデリングに明け暮れる建築学科の学生にとって、最後に待つ試練が、自らの作品を仲間と教授の前でプレゼンする講評の時間だった。
 「初めのうちは、自信をもって提出した作品でも、鋭い指摘や質問を寄せられて、答えに詰まってしまうことがありました。自分なりの考えやこだわりがあるのなら、それを他の人に伝える力も必要だ、と鍛えられていたんですね」と、当時を振り返る武田さん。
 込められた意味や想いを正しく人に伝え、理解してもらい、支持されなくては、作品に命は通わない。それが対価をもらうビジネスであればなおさらだ。
 恩師のメッセージが、最近さらに心に響くようになったのは、今、彼女が所属しているのが、コンペを戦うための部署だからなのだろう。
 オフィスや商業施設等の家具・什器、製造機器のメーカーとして世界的にも有名な株式会社岡村製作所(以下オカムラ)は、その内部にターゲット別のデザイン・プランニングチームを擁している。入社6年目の武田さんは、店舗等のプランニングに携わった後、この春、オカムラの主戦場であるオフィスデザインを担当する部署に配属された。

勝つために、次につなげるために
印象や言葉にも磨きをかけて

 「オカムラの強みは、自社製品を用いて空間デザインを提案し、施工まで一貫で請け負うことができる総合力。勝てば製品販売に直結しますし、その後、オフィス拡張や移転する際にも優先的に声をかけていただけますから、コンペ担当チームの責任は重大です」と、武田さんが広げたのはこれまで携わった案件の企画書。
 コンセプト、レイアウト、使用する家具や什器の説明、完成予想CGまで盛り込まれた資料は、規模やニーズに合わせて部内から選ばれたメンバーが、チームを組んでつくりあげたものだ。

 現在、武田さんは主にマテリアルのセレクトやCG制作の指示を担当しているが、コンペ当日には、プレゼンターとしてクライアントの前に立つ機会も増えてきた。
 「上司から“君は声がいいから、ツカミをまかせるよ”と言われて、時々トップバッターのご指名を。なら、まず出塁しなくてはいけませんよね。チームオカムラの第一印象が私で決まるかもしれないんですから」
 より快適に、より効率的にと、各社が練り上げた自信のプランが競い合うコンペの場。ここを勝ち抜くためには、提案内容だけでなく、プレゼンテーションの演出や技術も重要なのだ。ましてこのチームの勝利は、一度きりの仕事ではなく、未来のオファーを生み出す可能性も秘めているのだから。
 ロジックに支えられた思考力。そしてクライアントを魅了する発信力。どちらの大切さも知る武田さんに、会社がかける期待は大きい。

クライアントの求める動線や快適性を、自社製品を用いてかなえるため、緻密なプランニングをチーム一丸となってつくりあげる。

コンペで獲得したクライアントから、オフィス拡張や移転のオファーがくるケースは多い。
現在武田さんが担当している顧客でも、5色のコーポレートカラーをアクセントに、増床を計画中だ。

上司が語る武蔵美力

後藤敏和
求められる任務に常に前向き
後藤 敏和

オフィスデザイン部
部長

 武田さんと僕には野球好きという共通点があります。それでいうと、今の彼女に期待しているのは、1番・2番バッターの役割。チャンスのきっかけをつくり、細やかな配慮と手配で、チームの柱へときっちりつなぐことです。勝つために編成されたチームの中で、自分に期待されているのがどんな任務か、クライアントが求めているのはなにかを考え、優先順位を決めて前向きに、確実に取り組むことができる人材です。